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【広報取材】観葉植物温室活用 バナナ生産へ試験栽培
麻溝支店管内で造園業などを営む㈱井上農園の井上喬之専務は、市内では珍しいバナナの試験栽培を昨年3月から始め、地域から注目を集めています。
同社では造園業に加え企業向けに観葉植物を自社の温室で栽培していましたが、新型コロナウイルス禍でリモートワークが増え、企業の観葉植物に対するニーズが減少。温室を有効活用するため新な事業創出を模索していました。バナナを選んだ理由は、インターネットで調べた情報を基に一本育てていた経験があり、観葉植物と栽培方法が似ていてノウハウを応用できたため。また、災害発生時に栄養価が高く、手軽に食べられる食料としてバナナを供給したいと考えました。
おととし9月から3カ月間、岡山県の農業法人で修業を積み、戻ってきてからは3棟の温室計250㎡で90株のバナナを育てています。品種は研修先でも扱っていた「グロスミッシェル」。甘みが強く、香りが良いのが特徴で、無農薬であれば皮まで食べられる希少な品種です。スーパーなどで売られている「キャベンディッシュ」が広がるまで世界的に食べられていた品種群です。
この品種の幹は、通常3mほどの高さまで育つが、観葉植物の温室では高さが足りないため、苗を定植する前に畝を1m掘り下げて対応しました。これが功を奏し、結果的に収穫時にも作業しやすい高さに実ができるようになりました。
温室内の気温は、観葉植物は10度まで下がっても問題ありませんが、バナナは25~30度に保つ必要があります。この冬は暖冬でしたが、一日の気温差が激しく温度調整が難しかったといいます。燃料価格の高止まりが続き採算性は厳しいですが、本格栽培への決意は揺るぎません。
土壌管理も徹底し、有機質肥料などは市内産を積極的に投入。土壌の酸性度を毎週計り、外部機関へ土壌検査も月1回依頼しています。 井上専務は「小さな子どもも安心して食べられるよう、生食が基本ですが、軌道に乗れば無添加の加工食品も企画していきたい。市の活性化につながる一つの起爆剤になれば」と、2~3年後の本格的な事業化を見据えています。